事件の概要
一. はじめに
東京都の教育現場で起きたこの事件は、ひどく悪質であり、「世界人権宣言」第二条1、第八条、第十八条、第十九条、「A規約」第一条1、第二条2,第五条1,「B規約」第一条1、第二条1・3、第五条、第十八条、第十九条、第二十六条、及び「ILOユネスコ『教員の地位に関する勧告』」7,35、38、46,63,64,78,94に明らかに違反する。
二. 裁判闘争の経過
この事件は、東京都豊島区立千川中学校教諭田畑和子先生が1995年定年退職の際、全員採用が通例の嘱託教諭に採用されなかったことに始まる。理由は示されず、田畑先生は、不採用を決定した東京都教育委員会を相手に訴訟を提起した。すると、審理の過程で校長の中神嘉治が多くの不合格理由(怠業、病人等)を捏造し、豊島区教育委員会へ情報として提供していたことが判明した。その裁判の内容については、「2003年第13次要請団報告書
『民の声』」で「校長が常に教師の思想をチェック」という題で報告している。
2003年7月の東京地裁の判決は、校長の捏造については判断せず、東京都教育委員会の裁量権を大幅に認めて田畑先生を敗訴させた。東京高裁、最高裁でもこの判決は覆らなかった。2005年11月、田畑先生は再雇用拒否理由を捏造した元千川中学校校長中神嘉治を相手に、改めて提訴したのである。
三. 人権無視の情報収集
二次訴訟でより明らかになったのは、「現状把握のため」行う校長の異常な情報収集ぶりであった。校長自ら積極的に校内を巡回して情報収集を行い、その対象は、校内のあらゆる職種(教頭、教諭、事務主事、用務主事、警備員)の人々、及び生徒
であった。教師を評価するために生徒を利用するのは、おそろしく非教育的な行為である。生徒は何も知らないで校長と「雑談」させられているのだから、生徒の人権を侵害していることにもなる。こんな偏った方法で校長は田畑先生の「宗教的、思想的、政治的」偏りのチェックを行っていた。これを許す法的根拠はない。
四. 校長の嫌悪 ―思想差別―
(1)生徒の学習権と教師の教育権を否定
@1995年文化祭で生徒作成の掲示物「南京大虐殺」を校長は「偏向」と否定し、「教師には事実を事実として教える自由はない」と断言した。田畑先生はこれに抗議活動を行った。
A豊島区教委へ偏向した報告文書
上記の件について、当時校長が豊島区教委へ、組合活動を嫌悪した不当労働行為意思を表明した報告文書を提出していたことが今回の審理の中で判明した。それには虚偽内容と共に田畑先生の名前が記載されていた。この文書の出現で、田畑先生を教育界から追放した校長の意図が明白になったのである。
(2)生徒の自殺隠蔽
1995年6月、ひとりの生徒が自殺した。校長は周囲に「事故」と言いくるめた。事実を知った田畑先生は「本当のことを言ってほしい」と発言したが、校長はウソを通した。これも田畑先生を追放した動機であろう。
五. 一・二審とも不当判決
今度こそ「冤罪」を晴らし、「人間の尊厳」を取り戻したいと願った訴訟だったが、またもや東京地裁・東京高裁で敗訴した。裁判所は根拠を示さず、ひとつの証拠も出せない校長の言い分を採用し、多くの裏付けのある田畑先生の主張を退けた。 現在、最高裁に上告中である。
六. まとめ
田畑先生は、生徒の基本的自由を尊重し、平和を維持するよう努めた教員だったが、失職させられ、名誉を失った。都・区教委と中神校長の行為は、冒頭に挙げたとおり、「世界人権宣言」、「A規約」、「B規約」、及び「ILOユネスコ『教員の地位に関する勧告』」の各条、各項に明らかに違反する。また、日本の司法の機能不全は、国際人権規約の精神に反するものであり、是正されねばならない。
日本政府は教員の管理を強め、行政側の気に入らぬ教師を排除する動きは加速している。貴委員会は、一刻も猶予ならぬこの深刻な実状を把握され、日本政府・東京都に対する強力かつ迅速な是正勧告をお願いする。
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